
今年(2019年)8月1日発売。長崎水族館が舞台のペンギンの飼育を回顧した本です。後釜の長崎ペンギン水族館はペンギンの聖地として有名ですので読ませていただきました。

目次
長崎水族館とは
昭和34年(1959年)4月1日に開館し平成10年(1998年)に閉館した長崎県の水族館です。長崎国際文化センター事業の一環として作られた水族館で開館当初からペンギンの飼育に力を入れていたそうです。
長崎水族館の閉館後、平成13年(2001年)に所在地を移して現在の『長崎ペンギン水族館』へとリニューアルをしました。
野生のペンギンを連れてくるとカビ症にかかる?
飼育当初時のお話として、南氷洋からやってきたヒゲペンギン3羽が数日の内に死んでしまったようですが、当時のペンギンの死因は気管をカビに侵食されるアスペルギルス症(カビ症)が多かったとのことでした。
昭和36年(1961年)に藩州丸より持ち帰ったアデリーペンギンも3羽中2羽が短期間で死んでいます。1羽は引き受け当初から弱っていて、もう1羽は腸炎で10ヶ月後に死んだとのことです。
ジェンツー全滅
同年の昭和36年4月に錦城丸より持ち帰ったジェンツーペンギン7羽とマカロニペンギン1羽の内ジェンツーペンギンは短期間の内に全て死んでしまったようです。同船から下関に送られたペンギン10羽も同様とのことです。
キングペンギンもやってくる
昭和37年(1962年)にはキングペンギン12羽が第2日新丸より長崎水族館に贈られましたが4羽はカビ症により2ヶ月間で息を引き取ったということです。残りの8羽は長期飼育に成功して後の長崎水族館のペンギン飼育の基盤となります。
2羽のコウテイペンギン
昭和39年(1964年)にはコウテイペンギンが2羽長崎水族館に贈られ、1羽(名前:フジ)は大変長生きして、28年5ヶ月も飼育することが出来たとのことです。
気候の全く違う日本でこれだけの期間コウテイペンギンを飼育出来たのは本当に凄いですね。残念ながらもう一羽は短命だったようです。
長崎式飼育法
通常屋内で飼育しているペンギンたちを冬季のみ日中は屋外で飼育し、日が暮れると屋内に戻す飼育方法+腹八分目給餌を取り入れたところ、健康増進、繁殖、飼育員とのスキンシップなど様々な面で大いに役立ったようです。
朝・夕のペンギンたちの徒歩での移動はペンギンパレードの先駆けとして来場客に人気があったとのことです。
3世繁殖は難関
2世(野生ペンギンたちの子供)は昭和40年(1965年)、キングペンギンの雛の誕生を皮切りに、同じ両親から計4羽順調に生まれたようです。
しかし、その子達から更に繁殖をさせるのが繁殖の難しいところのようで、月日は流れ昭和52年(1977年)に初めて、長期生存した雛(3世)が誕生したとのことでした。
長崎水族館は上野動物園などに遅れてペンギン飼育を開始していますが長期生存の3世誕生は国内初となったようです。昭和54年(1979年)にも更に3世を誕生させこの子は国内第二号の長期生存3世に。
長崎水族館のペンギン繁殖のルーツはキングペンギンなんですね。
キングペンギンの”ぎん吉”は39年9ヶ月生存
健康体で飼育環境が良いとこんなにも長く生きられる場合があるんですね。しかもぎん吉は野生から持ち帰った個体です。驚愕です。ぎん吉の記録はペンギン全種で世界一の飼育記録になったそうです。
著者 白井和夫さん
1953年に長崎大学水産学部卒業後、1959年長崎水族館の開館に合わせて入社。その後58歳の定年まで同水族館での仕事を務めたようです。設立時から長崎水族館を支えて、ペンギンの飼育に人生を注いで来られた方かと思います。
長崎ペンギン水族館の現在
9種173羽(執筆時)のペンギンが居るようです。まさに日本一のペンギン水族館ですね。ペンギンの種内訳は以下の通り
- キングペンギン
- ジェンツーペンギン
- ヒゲペンギン
- マカロニペンギン
- イワトビペンギン
- フンボルトペンギン
- ケープペンギン
- マゼランペンギン
- リトルペンギン
まとめ

長崎水族館は日本のペンギン飼育に多大な貢献をした水族館でした。飼育員さんたちの情熱が伝わってきました。
短命だったペンギンたちに関しては野生のペンギンを持ち帰り、飼育して生存させるというのは大変なことなんだなと少し気の毒な気持ちにもなりましたが、長生きしたペンギンたちと飼育員との絆のようなものはきっと存在していると思います。
現在は当時より飼育方法が確立されているでしょうし、飼育下で生まれたペンギンたちは大変人懐っこいみたいですね。この子達は野生の過酷な環境より飼育下で生活したいって思ったりするのではないでしょうか。
動物園・水族館での生物の飼育が人間と動物の双方にとってより良いものになってほしいものです。長崎ペンギン水族館のさらなる躍進も期待しております。
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